恐喝罪・脅迫罪
恐喝罪・脅迫罪とは
⑴恐喝罪
恐喝罪は,人を恐喝して財物又は財産上の利益を交付させる場合に成立します(刑法249条)。
典型例としては,「黙って従わないと痛い目に遭わせるぞ!」と脅して金銭を巻きあげる行為や,自分がお金を貸している相手(債務者)に対して,「恩を忘れたのか。今すぐ返さないと東京湾のエサになるぞ」などどいって返済を強制させる行為などが挙げられます。
後者の例のように,債権者として返済を求める行為は当然の権利行使です。もっとも,相手を痛めつけるような内容の強い言葉を投げかける等,やり方として度が過ぎてしまうと恐喝罪が成立する可能性がありますから,特に金銭が絡む事件では注意が必要です。
「恐喝」の手段は「暴行又は脅迫」とされており,相手方の反抗を抑圧するには至らない程度のものをいいますが,相手方を畏怖させる程度に至っていることが必要です。
そして,「畏怖」とは,相手に恐怖心を感じさせることを言います。
同罪が既遂に達するためには,恐喝の手段として相手方を畏怖させる程度の暴行・脅迫を行うことによって相手方を畏怖させ,畏怖という恐怖心ある状態下にある被害者をして金品などの財物等を交付させる行為が必要です。
仮に被害者が全く畏怖せず,加害者に同情するなどして財物等を交付した場合には,恐喝未遂罪(251条,249条)が成立するにとどまります。
⑵脅迫罪
脅迫罪は,人又はその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨を告知し,それが客観的に見て相手方を畏怖させる程度のものに至っている場合に成立します(刑法222条)。
典型例は,「殺すぞ!」とか「お前の親を痛い目に遭わせるぞ」などと申し向けて脅す行為が挙げられます。
「親族」に対する加害の告知も処罰対象とされているのは,これらの近しい関係にある人への加害の告知は自分に対する行為と同視できるからです。そして,「親族」には,6親等以内の血族,配偶者及び3親等内の婚族が含まれるとされており(民法725条),これには恋人や内縁関係にある者は含まれません。
また,同罪が成立するためには,「生命・身体・自由・名誉・財産」に対して「害を加える旨を告知」する必要がありますが,一般的・客観的にそれが相手方を畏怖させる程度のものに達していればよく,害悪の告知によって相手方が現実に畏怖することまでは必要ありません。
もっとも,「害悪」の内容は,将来の害悪であって,告知者がコントロールできるものであることが必要です。そのため,「天罰が下るぞ」「天変地異が起こるぞ」などという内容では,脅迫罪は成立しません。
なお,害悪の告知方法にも限定はなく,直接口頭でする方法に限らず,メールやLINE,文書,あるいは腕を振り上げる素振りを見せるなどの態度で示す場合でも,脅迫罪が成立することがあります。
感情が高ぶって,つい吐いてしまった暴言行為によって脅迫罪が成立してしまうことがありますから,行き過ぎた暴言には注意が必要です。
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また,脅迫罪に近い犯罪として,強要罪(223条)があります。
これは,本人又はその親族の生命・身体・自由・名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した場合に成立します。
「義務のないことを行わせ」には,雇っている人に水入りバケツを数時間頭上に据えさせる行為や,理由なく謝罪文を書かせる行為などが挙げられます。
脅迫罪とは異なり,本罪は発生した実害を処罰するものですから,暴行又は脅迫を行ったものの,相手が要求に応じなかった場合には未遂となります。
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人は,何等かの目的をもって相手に対して暴行や脅迫行為をすることが通常です。
その目的が明白な場合には,強制性交等罪,強盗罪や恐喝罪が成立することになりますが,目的が必ずしも明示されない場合も実際のケースでは多くあります。そのような実態を踏まえ,要求行為だけを独立の犯罪累計として処罰することとしたのが脅迫罪といえます。
恐喝罪・脅迫罪の刑罰及び時効
恐喝罪は,10年以下の懲役刑となります。
時効については,犯罪行為が終わった時点から数えて7年経過すると時効が成立します。
脅迫罪は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑となります。
時効については,犯罪行為が終わった時点から数えて3年経過すると時効が成立します
脅迫罪には罰金刑があるため略式起訴で済む可能性がありますが,恐喝罪は起訴された場合,公開の場で刑事裁判にかけられます。
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このように恐喝罪のほうが重いのは,脅迫罪とは異なり,恐喝罪の場合には財産的な損害の有無が犯罪成立の要件となっており,犯罪の態様としてより処罰の必要性が大きいと考えられているからといえます。
脅迫罪・恐喝罪の量刑を行う場合,一般的には以下の項目を基準として総合的に判断されます。
- 加害者と被害者の人間関係
- 脅迫行為の内容,文言,執拗さの程度
- 脅し取った金銭の額の程度
- 犯行の動機
- 示談の有無,及び示談金額
- 被害弁償の有無,及び被害弁償額
時効の起算点,すなわちどの時点から時効が進行するのかについては,判断が難しいケースもあり,法的判断が必要となります。ご不明点がある場合には,一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
恐喝罪・脅迫罪の弁護活動
恐喝罪・脅迫罪のいずれの場合でも,まずは被害者に十分な謝罪と示談金を提示し,早期の示談成立を目指すことが重要です。
恐喝罪・脅迫罪は,被害者からの告訴がなくても起訴することができる非親告罪です。そのため,示談成立後に告訴を取り消してもらったとしても,必ずしも不起訴になるというわけではありません。
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しかし,示談成立をアピールすることは検察官や裁判官への心証を良くすることにつながりますから,示談が成立すれば不起訴処分や執行猶予付き判決にとどめてもらえる可能性が飛躍的に高まります。
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もっとも,被害者は脅迫行為や恐喝行為を受け,加害者に対する恐怖心を強く抱いている可能性が高いです。そのような場合,被害者が加害者に対して連絡先を教えることは通常あり得ないため,連絡先が分からない場合には示談交渉を開始することもままなりません。
ただ,弁護士が受任している場合には,多くのケースでは検察官を通して被害者の連絡先を教えてもらうことが可能になります。
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したがって,示談交渉をスムーズに進めて前科をつけないためにも,速やかに弁護士に依頼し,和解を進めていくことが重要になってきます。
示談が成立すれば大半のケースでは前科がつかないため,スムーズな社会復帰が可能となります。弁護士に早く依頼すればするほど,加害者にとって有利な弁護活動を行うことができますから,岡山地域で恐喝・脅迫事件にお悩みの方は,一度当事務所の弁護士までご相談下さい。